1.労働者派遣法について
担当部局: 商工労働局 答弁者: 知事

問:
 今回の雇用不安は,直接的には世界的な経済危機がもたらしたものであるが,ここまで状況が悪化したのは,構造改革の名のもと,なし崩し的に労働者派遣法を改悪し,労働環境を低下させてきたことが背景にあると言わざるを得ない。

 もともと法律で禁止されていた派遣労働という雇用形態は,昭和60年の労働者派遣法の制定,その後3度の見直しによる規制緩和により,今や多くの業種で野放しとも言える状況になっている。
 この結果,派遣をはじめとする非正規雇用の占める割合は,今や3人に1人に達し,一旦非正規雇用になれば,正規社員になることが困難という,雇用形態の硬直化・固定化が進行しつつある。

 非正規雇用は,働きに見合った処遇がなされていないため,不安定な生活を余儀なくされており,また,今回,多くの企業が多額の内部留保を抱えながら,大量の派遣切を行ったことからも明らかなように,利潤追求を何よりも優先する企業の姿勢が批判を受けている。

 企業は単に利潤を追求するのではなく,出来うる限りの努力により従業員の安定的な雇用を確保し,社会的責任を果たすべきである。もっと企業が自覚を持って安定的雇用の確保に取り組むよう,県としても強く働きかける必要があると考える。

 国でも派遣元だけでなく派遣先も含めた法改正の検討を始め,企業に対し安定的雇用を求めるなど,やっと非正規労働者の雇用を重視する動きが出てきたところである。

 そこで,労働者派遣法の問題についてどのような認識を持ち,国に対してどのような要請をしようと考えているのか,また,県内企業に対してどのように対処しようとしているのか,知事の所見を伺う。

答:
 現行の労働者派遣法は,平成15年,経済のグローバル化や産業構造の変化,価値観の多様化などに伴う企業や労働者のニーズに対応して改正されたものであります。
 しかしながら,派遣労働者は,

・ 雇用調整の影響を受けやすい。
・ 知識,技能の蓄積の機会が少ないため,正規雇用につながり   にくい。
・ 雇用者側の責任が曖昧になりやすい。

 などといった課題が,今回の急速な雇用環境の悪化の中で,浮き彫りとなって参りました。

 このため,1月14日に,全国知事会として,非正規労働者の処遇改善に向けた法的な整備を政府や日本経団連などに要請したところでございます。

 また,県といたしましても,県内の経済団体に対し,非正規労働者の雇用の維持を申し入れるとともに,雇用の維持・拡大を行う中小企業に対する「雇用対策特別資金」の創設を今回の臨時県議会に提案しております。

 県といたしましては,引き続き,離職された方々に対する就業支援に全力で取り組んで参る所存でございます。
 

2.雇用創出に向けた取組みについて
担当部局: 商工労働局・
農林水産局
答弁者: 商工労働局長

問: 
 
今臨時会で,緊急雇用対策として,370人分の雇用機会の創出を目指し,約52億円の補正予算が計上されたことは,昨年末に雇用対策に関する緊急要望を行った我が会派としても,迅速な対応として一定の評価をするものである。

 しかしながら,現下の極めて厳しい雇用,経済情勢を踏まえれば,今回計上された取組以外にも,雇用創出の術はまだまだあると言うのが正直な感想である。

 例えば,河川のしゅん渫,公園や学校の清掃,里山の整備や耕作放棄地の手入れなど,我々の生活に直結する身近な仕事は無数にあり,これらに着実に取り組むことで更なる雇用を生み出すことが可能と考える。

 また,当面の対策としては,何よりも今職を失った人たちの雇用を確保し,県民の不安を払拭することが急務であるが,一方で産業構造の転換を視野に入れた,長期的な取組も併せて実施していく必要がある。
 特に農業分野においては,国民生活に不可欠な産業にも関わらず,労働力不足により食料自給率の低下を招いている。今回の事態は人材確保の好機であり,JAなどの関係機関と連携しながら,就農相談や職業訓練,農家での実践研修を実施するなど,新規就農者の確保に結び付ける取組が重要である。

 こうした状況を踏まえれば,今回の対策に留まることなく,引き続き,短期・長期の視点から切れ目のない対策を講じていくことが必要と考えるが,どのように取組んでいこうと考えているのか,知事に伺う。

答:
 厳しい経済・雇用情勢の中にあって,県民の皆様の不安の解消を図り,その暮らしを守って参りますためには,離職者を対象とした臨時的な雇用創出に加えまして,人材が不足している分野への誘導など,中長期的な視点に立った雇用対策を実施する必要があると認識をいたしております。
 このため,緊急の取組としては,今回の補正予算に加えまして,今後,国の「緊急雇用創出事業」を活用した臨時的な雇用・就業機会の創出に取り組んで参ります。

 一方,中長期的な取組といたしましては,福祉や農林業等,人材が不足をいたしております分野について,職業訓練や研修などを実施をし,将来の雇用につながる対策を講じて参ります。

 例えば,農業分野におきましては,市町や農業団体と連携をいたしました技術研修や,農業技術大学校における人材育成等を通じまして,意欲ある就農希望者を集落法人等に受け入れ,育てていく仕組みを定着させることによりまして,雇用・就業機会の創出に努めて参りたいと考えております。

 こうした新たな視点を取り入れた総合的な雇用対策を県民の皆様方の声を生かしながら,切れ目なく積極的に推進して参ります。
3.今後の雇用情勢の見通しとその対策について
担当部局: 商工労働局 答弁者: 知事
問:
 厚生労働省の推計によると,昨年10月からこの3月までに職を失う非正規労働者は8万5千人,失業と同時に住宅や部屋を失った人も2千百人を超えている。
 製造業だけでも46万人の派遣労働者がおり,今後,いわゆる2009年問題と言われる派遣可能期間の一斉満了を迎えることになれば,失業者が加速的に増加する恐れがある。

 また,先日の新聞には外国人労働者の大量失業の記事が掲載されていたが,言葉の問題などもあり,新たな職が見つからず帰国せざるを得ない人も多いなど,日本人以上に深刻な状況になっている。

 さらに,総務省が発表した労働力調査では,昨年11月の完全失業率は3.9パーセントと前月に比べ0.2ポイント上昇しており,経済状況が好転することは当面見込まめない中で,今後,失業は正規社員へも波及し,一層厳しさを増すことが懸念されている。

 そこで,今後の雇用情勢についてどのような見通しを持っているのか,また,更なる雇用情勢の悪化にどのように備えようと考えているのか,知事に伺う。
答:
  昨年末に発表された日銀短観におきましても,「雇用」の過剰感が明らかになっており,正規労働者の雇用調整も懸念されるなど,今後の見通しには,非常に厳しいものがあると認識いたしております。

 このため,緊急的な雇用創出に加え,新たな産業の創出や,中小企業の成長力強化の取組,さらには,福祉や農林業等,人材が不足している分野への円滑な労働力移動に向けた取組など,中長期的な視点に基づく幅広い対策を進めて参ります。

 こうした対策を機動的に実施することにより,現在の経済情勢や今後一層の悪化も懸念される雇用情勢に対応することとしておりますが,そのためにも,更なる補正予算や平成21年度当初予算により,切れ目ない対策を講じて参りたいと考えております。