2003年3月・県議会報告

1 出島埋立地区廃棄物処分場設置事業について

 (1) 環境保全協定の締結について

担当部局:

23 環境局

答弁者:

01 知事

問:
 県では広島市と共同で,地元住民代表を構成員とする「出島処分場事業連絡協議会」を設置し,これまで4回に渡り地元住民との協議・調整を重ねており,今後とも協議会運営を適宜・適切に行っていく必要があるが,万全の体制をとったとしても,やはり不測の事態が生じたらどうするのか,といった不安や心配に対する責任の明確化を図るということが今の地元住民にとっては,一番大事な点であると考える。
 そのためには,事業者である県が,事業実施に当たっての環境保全や安全に関する事項について,明文化し,住民代表との環境保全協定を締結することにより,その責務を明確にすることが必要である。
 また,その責任を明確にする上でも,協定の締結にあたっては,万が一,事業実施により地域の環境に被害が生じた場合には,現状復帰などの責任事項を盛り込むべきであると考えるが,知事の見解を求める。

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 委員ご指摘のとおり,万全を期して参りますけれども,万が一,事故が発生した場合に対しまして,県の責務等を明らかにし,それを協定として結ぶことは,必要であると認識をいたしております。 今後は,この環境保全協定の案を協議,検討していただき,できるだけ早い時期に締結するとともに,引き続き,安心で安全に暮らしていただける処分場の設置に努めて参ります。

 (2) 今後の事業の進め方について

担当部局:

23 環境局

答弁者:

28 環境局長

問:
 環境保全協定というのは,今までは,企業の公害防止,あるいは,産廃処理業者,この監視,こういった役割を持つと見られてきた。そういった観点から,今まで,いろんな協定が結ばれてきたと思います。
 今回のような公共事業,県が行う公共事業,この最終処分場の設置に関して,県が地元住民と協定を交わすというのは,あまり前例がないものではないかとも思っております。
 そこで,今,現状は,この事業の現状は,実は,まだ,廃棄物処理法に基づく,処理施設の設置許可というのは,広島市長が出すことになっておりますが,この広島市長の許可は,まだ出てない状況なのですが,知事答弁にもあったのですが,協定を結んでいく,第一義に住民の合意をとることだと思いますが,やはり,協定なくして着工なし,すなわち,住民合意なくして着工なし,という事業者としての,県の立場を,やはり,今,明確に地元住民の皆様方に伝えていくということが,誠意ある県の姿勢だと考えるのですが,事業当事者の環境局長にお伺いしたいと思うのですが,その点,いかがでしょうか。

:
 行政が設置いたします処理施設に係りまして,地域との間で環境保全協定を締結するという事例は,全国的にも非常に少ないものでございます。これは,私どもの,地域の皆様方との信頼醸成を第一とするという基本的な姿勢から,締結を予定しているものであることを是非ご理解いただきたいというように存じます。
 これまでにも,地域の皆様方とは,協議を重ねながら参ってきております。今後とも,引き続きまして,先ほどありましたけれども,今,まだ許可をいただいておりませんが,施設の建設着工後におきましても,地元住民の方々に理解と協力を得ながら事業を進めて参りたいと,かように考えております。

2 障害者福祉の支援費制度について

 (1) 新制度におけるサービス提供量の確保について

担当部局:

25 福祉保健部

答弁者:

30 福祉保健部長

問:
 現在の措置費制度におけるサービス提供は,政令市,中核市を除いて,県内373事業所で受託実施している。
 新たな支援費制度では,サービス提供を実施する事業者が自らの意思で県に申請し,事業者としての指定を受けることとなっており,県の見込みでは407事業所が申請する予定であるが,2月27日現在で,実際に申請があったのは,260事業所である。
 新制度のスタートまで1月なったこの時期で予定の約6割しか申請がない状況に,果たして必要なサービスの供給量が確保できるのか不安である。
 このように,事業所申請が遅れている原因をどのように分析し,サービス提供量の確保に向けてどのように取り組んでいくのか,福祉保健部長に尋ねる。

:
 支援費制度への移行に当たっては,サービスの絶対量を確保することが極めて重要な課題であります。
 現にサービスを提供している全ての事業者から,申請が提出される状況にはなっていませんが,これは,国が示す支援費基準等の内容の確定が遅れたこと,一部の事業について現行よりも厳しい条件が指定要件案として示されたことなどのため,申請を躊躇する事業者があったことによるものと考えております。
 現在,市町村と連携して,早期申請の勧奨に取り組んでおりますが,この度確定した居宅介護事業者に係る国の指定要件が,当初示された原案より緩和され,介護保険事業者の参入が可能となったことや,現にサービスを提供している事業者のほとんどから,申請の意向が示されていることなどから,現行サービス量については,ほぼ確保できるものと見込んでおります。
 さらに,現にサービスを利用している方が,引き続きサービスが受けられるよう,市町村を通じて個別利用者毎に確認しているところであります。
 4月からの導入に向けて,引き続き,市町村と連携して,地域におけるサービス提供体制の確保・充実に努め,円滑な移行に万全を期して参りたいと考えております。

 (2) 利用者のサービス選択や相談に応じる体制の整備について

担当部局:

25 福祉保健部

答弁者:

30 福祉保健部長

問:
 支援費制度では,本人が契約を結ぶのが原則であり,重い知的障害者などの契約手続きを支える仕組みが欠かせないが,利用者のサービス選択や相談に応じるケアマネージャーの制度化は見送られたと聞いている。また,現在県内22箇所で実施している在宅の身体・知的障害者を対象にした相談支援事業については,国は新年度から補助金を打ち切り,一般財源化する方針を打ち出しており,この一般財源化に伴い,事業が縮小・中止されるのではないか,といった危惧の声が関係団体から上がっている。
 支援費制度の導入に伴い,利用者への情報提供を行うことは,県としての重要な役割のひとつであるが,新年度において,利用者のサービス選択や相談に応じる体制の確保をどのように図っていくつもりか,福祉保健部長に尋ねる。

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 利用者に対する相談に応じたり,サービス等に関する情報を提供する体制につきましては,従来より,福祉サービスを総合調整する地域療育等支援事業や障害者生活支援事業,さらには,市町村職員の専門性の向上を図るためのケアマネジメント研修等を通じて,その確保・充実を図って参りました。
 平成15年4月から導入される支援費制度におきましては,利用者が適切にサービスを選択するための相談体制のさらなる整備が極めて重要な課題であります。
 この度,国においては,その一部の事業について,一般財源化されたところでありますが,本県におきましては,相談支援体制の重要性に鑑み,地域療育等支援事業やケアマネジメント研修を引き続き実施するなど,市町村における相談支援体制の確保・充実を支援して参りたいと考えております。

3 特定疾患治療研究事業について

 (1) 医療費公費負担の認定手続きの現状について

担当部局:

25 福祉保健部

答弁者:

30 福祉保健部長

問:
医療費の公費負担を行うに当たり,各患者からの申請に対して,現在,どのような手続きにより認定を行っているのか伺う。

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医療費公費負担の申請は,所定の申請書に主治医が記載した意見書を添付して,患者又は患者の委任を受けた医療機関から,県に提出するということになっております。
 県において申請を受け付けた後でございますが,毎月,難病に関する専門家で構成される特定疾患対策協議会におきまして,申請者の症状,主治医の診断,意見等に基づいて,承認又は不承認の判定を行い,その結果を踏まえて,最終的に県知事が認定を行うということになっております。

 (2) 広島県において継続申請に対する不承認の割合が高いことについて

担当部局:

25 福祉保健部

答弁者:

01 知事

問:
医療費公費負担の継続申請について,平成13年度には全国的にほとんどが承認されているが,平成14年度に入って,全国平均で3.4%が不承認となり,広島県は全国平均を上回る4.5%が不承認となっている。
これは,平成13年度に国が認定の適正化システムを導入したことによるものと聞いているが,広島県は全国平均と比較して不承認の割合が高い。
患者救済の観点からみて,承認に関する県の考え方は厳し過ぎるのではないかと考えるが,県の認識を知事に尋ねる。

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特定疾患の認定は,平成13年度から,国が導入した適正化システムによる統一的な判定基準を基本として,各都道府県において,専門家による検討を踏まえつつ,認定を行うこととされております。
 本県では,不承認となる率が全国平均を約1%上回っておりますが,各都道府県によって0%から15%までの幅が見られる中で,ほぼ全国と同様な認定審査が行われているものと考えております。

 (2)-追加 広島県の認定基準の見直しについて

担当部局:

25 福祉保健部

答弁者:

01 知事

問:
 難病患者が増加しており,国の方では,医療費公費負担が莫大に膨らむことを警戒して,認定基準を厳しくしていこうとしていると思う。
 ただ,認定には県の裁量があり,例えば宮城県,熊本県,沖縄県,愛媛県では,継続申請に対する却下がゼロとなっている。
 現場の主治医が当該疾患と診断しているのであり,これについては,福祉に対する知事の政治姿勢,意識が現れる部分と思う。
 広島県の認定基準の見直しについて,再度知事の考えを伺う。

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 全国平均よりも約1%高いことから,その差異がどこに原因があるのか,これは調査してみたいと考えております。

 (3) 医療費公費負担の認定基準の見直しについて

担当部局:

25 福祉保健部

答弁者:

30 福祉保健部長

問:
今後,国の難病対策の見直しの一環として,認定のプロセスや基準が変更される予定と聞いている。見直しによって,公費負担の対象から除外される疾患などがあれば,患者への影響は甚大であり,また,認定基準がどのようになるのかは患者にとって重要な関心事である。
難病対策の見直しの中で,本事業の対象疾患及び認定基準について,国ではどのような検討がなされているのか,また,それを踏まえて県としてどのような対応を考えているのか伺う。

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難病対策の見直しにつきましては,制度の適正化や安定化を図る観点から,昨年8月に国の審議会が基本的な方向性を取りまとめております。
 これを受けまして,国の特定疾患治療研究事業が再構築され,本年10月から施行されるということになっております。
 現時点では,その詳細な変更内容は示されておりませんが,新たな制度におきましては,少なくとも現在の45の対象疾患につきましては,そのまま存続されると伺っております。
 また,認定基準につきましては,その明確化を図るため,
@     各疾患の診断基準を最新のものに改めるとともに
A     治療の結果,軽症となった場合の取り扱いを見直す, と伺っております。
 制度見直し後も,新たな基準に基づき,専門家の意見を踏まえながら,引き続き,適正に審査をして参りたいと考えております。

 (4) 審査結果の申請者に対する通知について

担当部局:

25 福祉保健部

答弁者:

30 福祉保健部長

問:

患者の方から実際の通知書を見せていただいたが,不承認の理由が具体的に記載されておらず,理由がよくわからなかった。専門家による審査を経た結果でのことであろうが,その決定自体は県が行ったものである。

行政の説明責任を果たす意味でも,患者に対して,その理由などわかりやすく示すことが必要であると考えるが,県の認識をお伺いする。

:現在,不承認となった方には,その理由を記載した通知書を交付しておりますが,認定審査は専門的・総合的な観点から行われているため,不承認の理由をわかりやすく記載するということが,必ずしも容易ではない場合もあるのではないかと考えております。
 今後とも,審査委員の協力を得ながら,不承認の理由をできるだけ分かりやすく記載するよう,努めて参りたいと考えております。

 (5) 認定審査結果に不服がある場合の対応について

担当部局:

25 福祉保健部

答弁者:

30 福祉保健部長

問:
認定審査の結果は,医療費の負担の観点から患者に対する影響が極めて大きいため,患者がその結果を不服とした場合,何らかの手続きを経て,新たな視点から再度審査を受ける機会があって然るべきであり,そのことは申請者に周知されているべきである。
審査結果に不服がある場合には再度申請をすることができる旨,県として積極的に周知すること,並びに,再度申請があった場合には,初回申請時と比べてより慎重な審査を行うことができる体制とする必要があると考えるが,県の認識を福祉保健部長に尋ねる。

:
この事業は,行政不服審査法の対象となっておりませんが,不承認とされた場合でも,改めて申請できるということになっておりますので,今後は,不承認の通知書にそのことを明記して参りたいと考えております。
 また,県内には難病に関する専門家が少ないといった制約がございますが,今後は,再度申請があった場合には,初回に審査した委員以外の専門家を加えて審査する方法に変更することにしたいと考えております。

4 小児慢性特定疾患治療研究事業について

担当部局:

25 福祉保健部

答弁者:

30 福祉保健部長

問:
小児慢性特定疾患治療研究事業は,国においては,原則18歳未満とされているが,広島市,福山市を含め本県では全ての疾患について20歳未満まで拡大実施しており,約8,400人の患者が制度の適用を受けている。
しかしながら,この事業により公費負担を受けている方々から,国や県の財政状況が非常に厳しい状況の中で,国における補助金の一般財源化などにより,今後事業が縮小されるようなことはないだろうか,といった旨の不安の声が上がっている。
本制度は小児難病患者とその家族の生活を支援するという観点から,意義深いものと評価しており,今後とも,本制度の維持及び一層の充実に向けて努力していく必要があると考えるが,今後の事業推進についての方針を福祉保健部長に尋ねる。

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小児慢性特定疾患治療研究事業につきましては,御指摘のとおり,本県では,国の対象年齢よりも拡大して実施しているところでございます。
 児童の健全な育成を支援する観点から,本事業は大変重要なものでございますので,今後とも積極的に取り組んで参りたいと考えております。

5 新生児聴覚検査事業について

担当部局:

25 福祉保健部

答弁者:

30 福祉保健部長

問:
 県は,新年度から新生児に対しての聴覚検査を新たに実施することとしており,聴覚障害の早期発見に向けた取り組みとして評価するが,聴覚障害が判明した場合には,適切なケアを早期に開始することが重要である。
 そのためには,難聴児に対する療育の支援体制と保護者に対するフォロー体制の確保をしっかりと行い,周知を図ることがこの事業に対する理解促進と,安心して子育てができる環境整備につながるものと考えるが,取り組み方針を福祉保健部長に伺う

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 新生児聴覚検査事業を円滑に実施していくためには,産科や耳鼻科等の医療機関,療育機関,市町村等の協力や連携が不可欠であるとともに,聴覚障害と診断された子どもやその家族に対しては,相談体制の整備を含め,各種の支援が極めて重要でございます。
 まず,療育支援体制につきましては,現在,県内で療育などの支援を受けられる施設は,5ヶ所でございます。全国に比べて,体制整備が進んでいる状況にございます。その上で,難聴と診断された子どもや家族の負担を軽減するためには,医療機関,保健所,市町村等の連携に基づき,より身近な地域で,保健指導や相談を受けられるシステムづくりが重要でございます。
 また,この検査により,聴覚障害の疑いがあると判定された場合に,家族の不安や混乱を招くことがないよう,家族に対して,検査から療育の全過程における支援も重要でございます。
 こうしたことから,県医師会・広島大学・行政等で構成する「地域保健対策協議会」におきまして,検査の進め方や地域における具体的な療育への支援,あるいはフォローアップ体制などについて,検討を進めてきたところでございます。
 今後,関係者の理解を深め,それぞれの役割に応じた支援を行うことができるように,事業実施マニュアルの作成や研修会を実施するとともに,広く県民の皆様に,この事業を周知しながら,平成15年10月からの円滑な事業実施に努めて参りたい考えております。

6 新たな障害者プランの策定について

担当部局:

25 福祉保健部

答弁者:

01 知事

問:
 新たな障害者プランの策定にあたり,保健・医療・福祉サービスの量および質の充実をどのように進め,また,関連する施策体系をどのように構築しようとしているのか伺う。

:
 最近における障害者を取り巻く環境は,交通バリアフリー法や介護保険制度,さらには本年4月からの支援費制度などに代表される新たな施策の導入や,高齢化や障害の重複化のような障害者自身の変化など,大きく変化してきております。
 こうした中で,昨年12月に,国において策定された,平成15年度から10年間の障害者施策の基本的方向を定めた「障害者基本計画」におきましては,「共生社会」の実現が基本理念として掲げられ,これを達成するために,障害のある方々が活動し,社会に参加する力の向上を図るとともに,福祉サービスの整備やバリアフリー化の推進など,自立に向けた地域基盤の整備等に取り組むこととされています。
 県におきましては,このような考え方や状況の変化を踏まえながら,保健・医療・福祉サービスなど,障害者個人の日常生活全般にわたる支援や,社会のバリアフリー化などの社会環境の整備からなる幅広い施策体系を構築し,障害者の方々の自立と社会参加が一層進むよう,特色ある新しい障害者プランを策定して参ります。